四将新報

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【自戦記】第7期四将マスターズ予選B卓#3─第4局(決着局)─

 四将新報管理人による四将マスターズの自戦記第3弾。予選最終局となった第4局の模様をお届けする。苦闘を続ける筆者が最終局をどのように戦ったのか、予選B卓の最終決戦をぜひ見届けて頂ければと思う。
 また、本局を含めた対局の模様は日本四人将棋連盟様のYoutubeチャンネルより視聴可能だ。そちらと併せてお読みいただけると幸いである。

※こちらは筆者(管理人)がnoteに投稿したものを一部再編集したものです。

 

決着局 ~疲弊霧中の開局~

第7期四将マスターズ 予選B卓第4局 Bルール4局制
対局者 ()内は第3局終了時のポイント
↑やきそばアマ(7pt)→天GAMI初段(-1pt)
↓CPU(0pt) ←岸亜双雷帝(13pt)

対局日:2020年4月15日
初手からの指し手
↑4七歩 →7四歩 ↓5四歩 ←3四歩
↑5六歩 →8一飛 ↓6三歩 ←2四玉
↑4八玉 →8五玉 ↓5三飛 ←2三金
↑5七玉 →6五歩 ↓3二銀 ←2二金
↑6七歩 →7五玉 ↓5五歩 ←4五歩(第1図)
 

 第3局まで終えて私は7ptの2位。1位の岸亜雷帝は13ptで、その差は6ptと大きく離されている。当時は具体的な点差の計算ができておらず、伝えられた「全員撃破なら予選突破の目がある」という事実から作戦を組み立てる状況にあった。実際、Bルールで6ptを獲得するには全員撃破した(詰ませた)うえでの勝利が唯一の手段である。

 では、当の私が闘気を燃やして対局に臨むことができていたかと言えば…決してそんなことはなかった。エラーによるDM指し継ぎ、第3局までに渡る3度の一騎打ちでの敗北劇。それに加えて第4局の直前には、ゲームサイトの方でなりすましが現れ、対局開始を妨害されてしまう事態に。対局を試みるも失敗が続き、非常手段として全員がハンドルネームを変更して対応することになった。

 トラブルに対応して下さった皆さんには頭が上がらないが、集中力がほぼ切れた状態に陥っていたのは事実だろう。だがここまで来たからには大負けだけはしたくない。対局は予定通り開始され、手の流れに沿って天守閣玉に組んでいく。

 

第1図

 

 左右の2名は当然CPU狙いに動くが、当のCPUは気にしないかのように↓5五歩と突っ掛けた。対して岸亜雷帝も←4五歩と動いて第1図。いきなり玉頭で戦端が開かれる形になりおおいに悩む。これは果たして↑同歩と取っていいのだろうか・・・。玉頭で戦いになれば集中砲火を浴びかねないし、何かの拍子で三人攻撃手を指しかねない。一応規定は頭に詰め込んだつもりだが、そのリスクを背負いながら指すことに恐怖を覚えた私は、→2二銀と岸亜雷帝にぶつけて局面を動かそうと試みた。
 

CPUの激走

第1図からの指し手
↑2二銀 →7六歩 ↓5六歩
↑6八銀 →8三金 ↓2一歩 ←1二金
↑1七銀 →8六金 ↓7二銀 ←1七金
↑4八金 →7二金 ↓5二玉 ←3五玉
↑9八銀 →6一金 ↓4三玉 ←4四銀
↑9七銀 →6二金 ↓5二飛 ←3六歩
↑8八銀上→5二金 ↓同金  ←2九飛
↑8六銀 →同玉  ↓8七金(第2図)
                →9五玉 ↓8八金 ←1六金
↑7七銀 →1四飛 ↓5七銀
↑同金  →1六飛成↓5七歩成
↑同飛  →1八龍(第3図)

第2図

 

 交換した右銀を今度は左辺に投入し、半ば二正面作戦のような大勢を取る。天GAMI初段がCPU玉を追い詰めていくなか指された一手が↓8七金。ここに来てまさかのマジックである。マジックは四人将棋特有の手筋で、他者の駒の効きを利用して王手をかける、まさに魔法の一手。打ち込まれた金を天GAMI玉は取ることができず、そのまま再び手番を得たCPUが8八の銀を取る。

 実はこの辺りから同様の「マジック」でCPUに1手詰が生じているのだが(具体的には5四に金駒を打てば詰む)それどころではない。対局中は全く気付いておらず、CPUのまさかの一手への対応に追われていた。その間に天GAMI初段は岸亜陣へ飛車を打ち込み攻撃開始。この辺りはCPUを詰まさずに岸亜雷帝をある程度追い詰めるという意図があったのかもしれない。

 最終的に、その判断に私は助けられることになるのだが、それは別のお話。混沌とする局面に慌てるばかりであった。打ち込んだ飛車で暴れる天GAMI初段が変則王手飛車を決めた辺りで私はチャンスに気づいた。

第3図

連続撃破

第3図からの指し手(太字は手番の変わる王手)
↑2八歩 →2九龍 ↓9九金 ←2四銀
↑5四銀(撃破) →2八龍
↑5八飛 →4八飛 ←3三銀引
↑2五金                      ←4四玉
↑5三銀不成(撃破)→8八銀(第4図)

 王手飛車取りの形だが、取られるのは岸亜雷帝の飛車。その効きを活かさない手はなく↑2八歩。この歩を打つあたりでCPU玉への詰みを発見。そこから対面撃破までは自然な手の流れだが、続いての←3三銀引で岸亜玉にも詰みが発生。最後の↑5三銀不成がぴったりで二者連続撃破に成功した。

 高鳴る鼓動を抑えながら銀を成らずに突き出すとき、再び脳裏に「全員撃破」の文字がよぎる。→8八銀と抑えられて局面は厳しいが、ここまで来て食い下がるわけにはいかない。心を奮い立たせて画面に向き合った。

第4図

 
決着
第4図からの指し手
↑8八同銀→同飛  ↑7八銀 →8七銀
↑5七玉 →7八銀 ↑同飛  →同飛上
↑同金  →5八飛 ↑4六玉 →5六金
↑3五玉(第5図)→2九飛 ↑2六銀 →7八飛
↑5二銀不成→2三金↑8一飛 →4五金
↑同玉  →5五歩 ↑3四金 →8二金
↑6一飛 →2一金 ↑6三龍 →4五銀
↑2四玉 →3四銀 ↑3三玉 →2五銀成
↑7八銀 →7三歩 ↑7四龍 →8四金
↑9六歩 (終局図)
迄、112手でやきそばアマの勝利
1位やきそば(13pt)
2位天GAMI初段(0pt)
3位岸亜双雷帝(13pt)←やきそば
4位CPU(1pt)←やきそば

第5図

 

 二枚飛車、いや三枚の飛車が自陣に襲い掛かるのだから恐ろしいものである。どこかで退路封鎖されることは覚悟しながら、私は玉を上方へ逃がそうと試みる。逃げろ、逃げれば勝ちだって拾える。盤面の右上は金駒が密集しているが、いずれも既に詰んだ後の駒。玉が逃げ込むには格好のバリケードになる。そうはいっても右辺には龍が一枚構えており、何かの拍子で捕まってもおかしくない。ただ、王手の流れに乗って第5図↑3五玉。うまく逃げ込んで、局面に対して俄然自信が湧いてくる。↑5二銀不成で手駒を増やし、↑8一飛でとりあえずの詰めろ。追いかけられれば逃げればいい。タイミングを見て敵陣を包囲すれば大丈夫だろうという算段だった。

 ここまである程度冷静に指すことができていたが、→4五銀に咄嗟の↑2四玉が危ない一手。本譜は→3四銀だったが、代えて→3四金ならどうだっただろうか。2一の金もよく働く形となり、龍2枚を切る手が実現すればかなり危なかったかもしれない。

 冷静に最初から→3三玉と上がるのが良かったが、そのときは将来的な↑4二玉の脱出ルートが見えておらず、また→2二銀と打つ手が怖く指せなかった。→3四銀に↑3三玉となんとか上部脱出を実現する。以下→2五銀成に↑8七銀と縛り、↑7四龍が実現したところで勝ちを意識した。終わってみれば本当に全員撃破での勝利。一挙6ptの獲得。私は興奮冷めやらぬまま、立会人の中司会長による結果発表を見届けた。

 

第6図

 

決勝へ

 同率の13pt、撃破数の差で一位通過。信じられない話だった。そもそも全員撃破なら突破の目があるということすら信じがたかったし、それはあくまで二位通過の話だと思っていた。劣勢を意識しても、必死になって詰ませにいったのが功を奏した。対局機会を求めての大会参加だったが、予選突破というのは一大事だ。中司会長をはじめとした強豪との対決は楽しみだが、決勝戦の舞台に立つ以上半端な将棋は指せない。喜びと勝手な責任感めいたものを抱きながらその日は眠りについた。正確にはしばらく寝付けなかったのだが・・・。

 さて、改めて決勝進出を果たした選手を見てみたい。A卓からは中司四将マスターズ。四人将棋においては絶対王者とも言うべき存在である。C卓からは中田正康初段。中司四将マスターズが王者の指し回しならば、こちらは怒涛の予選突破だ。そして2位通過枠に本卓を戦った岸亜双雷帝が入った。本局こそ1位を取れたが、3度の一騎打ちでの敗北はもはやトラウマ。改めてなぜ自分がこのなかにいるのか不思議に思う。

 決勝戦は近日中に行われる予定である。自分なりのベストを尽くしていきたい。萎縮せずに楽しく指すことができれば一番だとも思う。決勝の全対局が終わればまた、時間を見つけて自戦記を書いてみたい。