四将新報

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あの4月の激闘をもう一度!【第9期皇帝戦勝手にダイジェスト#3】

 読者のみなさんこんにちは。第9期皇帝戦勝手にダイジェスト、第3回となる今回は第7局~第9局の模様をお届けしたい。4月中旬、1日で行われた三連戦はどれも濃厚な勝負になった。プロの駆け引きと技を皆さんと分かち合うことができれば幸いだ。

 本シリーズは管理人のnoteに同時投稿されています。また対局内容は日本四人将棋連盟のYoutubeチャンネルよりご覧頂けます。記事内にも動画を貼っていますので一緒にお楽しみ下さい!

 

 

第7局 中司五冠が効率よく寄せて全員撃破

 

 

 中司五冠の先手番で対局開始。駒組みが終わると、中司五冠が対面の水嶋皇帝と共に下家の岸亜雷帝へ攻略開始。もう一方のあるきびと四段は逆刃刀模様から中司五冠を狙い、戦型が固まった。挟み撃ちが決まったことで岸亜雷帝が徐々に追い詰められ、まずは中司五冠が岸亜雷帝を討ち取る。以降も中司ペースでゲームは進行し、今回のハイライトの局面を迎えた。

 

第7図

 図の↑9一飛は気持ちいい王手銀取り。とはいえ手番は別々に回るから、銀を取れるわけではない。しかしこの一手は水嶋皇帝に政略手を催促する狙いがあった。既に↓7四金と抑えてあるきびと玉は狭くなっていたこともあり、続く→9三歩に↓8二銀↑9三飛成が狙いの手順で撃破となった。あるきびと四段は中合が効かない形でありすでに回避は不能。水嶋皇帝が↓6一銀としても↑8三銀→同玉から一手一手だろう。この手順を踏めば水嶋皇帝もリソースを割くことになるだろうし、場合によっては打ち込まれた飛車が生き残りそうだ。本譜の手順ならば効率よく寄せて2位以上を確定させ、中司五冠の飛車を取ることができる。ゆえに水嶋皇帝は↓8二銀と飛車取りに逃げ、中司五冠に確実に寄せてもらう手を選ぶことになるのだ。

 最終的に中司五冠は水嶋皇帝も撃破して全員撃破に成功。第6局までで7ptと苦戦していた中司五冠だったが、ここで一挙6得点。ブーストをかけることができた。

 

第7局の結果(ポイント制Bルール、十二番勝負)
1位:中司帝王・天帝13pt(総合2位)+6pt
2位:水嶋皇帝12pt(総合3位)+1pt
3位:あるきびと四段14pt(総合1位)+0pt
4位:岸亜双雷帝10pt(総合4位)+0pt

 

 

第8局 水嶋皇帝の決め手炸裂!豁然たるトップ取り

 

 

 次の一局も中司五冠の先手・対面に水嶋皇帝の席順。あるきびと四段と岸亜雷帝が入れ替わったものの、ここも水嶋皇帝が抜刀銀戦法を採用して挟撃体制に持ち込む。水嶋皇帝が左辺に築いた手厚い壁を活かし、中司五冠がどんどんあるきびと四段を攻めて撃破。序盤戦は第7局に似た展開で進んだ。

 中盤以降は激しい攻め合いが続き三つ巴の攻防はどこで均衡が破れてもおかしくない大熱戦になった。しかし本局は比較的短手数で決着を迎えることになる。戦いが一気に動いたその瞬間を振り返っていこう。

 

画像2

 

 第8図は中司五冠の↑9七銀に岸亜雷帝が→同玉と取ったところ。十分激戦の跡がうかがえる局面だが、水嶋皇帝が放った↓8八飛本局の決め手とも言うべき一着。

 中司玉には既に詰めろがかかっているため、詰みを回避するべく中司五冠は↑9八金とマジック。この手が無ければ飛車打ちは失敗に終わるリスクも高い。相手2人の状況を丁寧に判断できているからこそ放つことができる手である。その後→同銀↓6八飛成に↑7七銀と縛って中司五冠は下駄を預けた。

 本譜はそのまま中司五冠が撃破され、直後の122手目↓7七龍で岸亜雷帝も即詰みに。抜群のバランス感覚で水嶋皇帝が寄せ切った。

 

第8局の結果(ポイント制Bルール、十二番勝負)
1位:水嶋皇帝16pt(総合1位)+4pt
2位:岸亜双雷帝12pt(総合4位)+2pt
3位:中司帝王・天帝14pt(総合2位)+1pt
4位:あるきびと四段14pt(総合2位)+0pt

 

第9局 248手の大決戦。最後に立っていた者は!?

 

 

 連戦で行われた3局目、第9局は本シリーズ最長の248手に及ぶ大熱戦になった。序盤からじりじりと互いを攻め合う展開が続くが、中司五冠が好機をつかみあるきびと四段に王手ラッシュ。自玉の詰みを悟ったあるきびと四段は合駒請求に応じて駒台上の戦力を全て放出。駒を入手しながら1人目の撃破に成功した。

 戦力を得た中司五冠が優勢に見えたが、周囲もそう簡単には勝たせない。水嶋皇帝・岸亜雷帝がひたすら粘り強く戦うと、一時形勢は逆転。中司五冠も簡単には勝負を決めさせまいと中段玉を巧みに逃がして二転三転の戦いに。それでも一歩抜け出すのが中司五冠だった。岸亜陣を巡る戦いで主導権を握り、第9図の局面で決めに出た。

 

第9図

 直前の←2八金は画面下部からの攻めを警戒した手。しかしこれが失着となった。中司五冠の→2四飛で勝負あり。←1七玉には→2六銀がぴったりで、←2八金が無ければ←2八玉が実現し、きわどく余してあるきびと四段に手番が回りそうだ。本譜は→2五飛の抵抗から19手に及ぶ攻撃の末、中司五冠が直接撃破に成功した。一点の妥協も許さないとはこのことだろう。確実に撃破が可能となる一瞬の隙を突いて、中司五冠が決めきった。

 その後も低く陣形を構えた水嶋皇帝をじっくりと包囲。長い長い勝負は中司五冠による再度の全員撃破によって終幕し、番勝負の様相は大きく変化していった。

 

第9局の結果(ポイント制Bルール、十二番勝負)
1位:中司帝王・天帝20pt(総合1位)+6pt
2位:水嶋皇帝17pt(総合2位)+1pt
3位:岸亜雷帝12pt(総合4位)+0pt
4位:あるきびと四段14pt(総合3位)+0pt

 

 この日の対局によって中司五冠が13得点と大躍進。20ptで水嶋皇帝と3pt差の2位に躍り出た。ここまで苦杯を舐める展開が多かった中司五冠だったが、タイトルをぐっと引き寄せた。

 だがBルールは1局ごとに7ptが分配される(1位3pt・2位1pt・撃破点1pt)ため、誰が最後に抜け出すかは当然予想不可能だった。水嶋皇帝はもちろん、あるきびと四段・岸亜雷帝にも十分皇帝位のチャンスは残されている。

 読者の皆さんのなかには、この勝負の結末をご存知の方も多いことだろう。戦いは結果がすべてかもしれないが、それを振り返るならばどのような道筋を辿ったか、今一度確かめる必要があるはずだ。次回は第10局~最終局まで一気にご紹介したい。是非楽しみにしていただければと思う。