四将新報

日本四人将棋連盟の棋戦情報・観戦記を中心に、四人将棋の情報をピックアップ!※管理人個人の趣味による更新のため、更新頻度には難があります。ごゆるりとお楽しみ下さい。

タイトルホルダーの技と意地【第9期皇帝戦勝手にダイジェスト#2】

 読者の皆さんこんにちは。皇帝戦勝手にダイジェスト第2弾ということで、第4局から第6局を振り返っていこう。今回も1局ごとに気になった局面をピックアップしていく。四人将棋だからこそ現れる面白い展開を皆さんと楽しむことができればうれしい。

 本シリーズは管理人のnoteに同時投稿しております。なお内容は同一です!

 

 

第4局 豪快成り捨ての一手

 

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 4月になって開催された第4局。第3局と第4局の間に昇段規定が改訂され、新規定によって3名が昇段した。あるきびと新四段が誕生したほか、水嶋皇帝も段位としては四段昇段。またTT二段も四段に飛び昇段となっている。いずれもタイトル獲得1期の功績による。

 

 さて本局は岸亜雷帝がCPU代指しとなって始められたが、中司帝王・天帝が序盤から二正面作戦を展開。上家の水嶋皇帝にも攻勢をかけつつ、CPUをきっちり撃破した。その後も中司・あるきびとが水嶋皇帝を挟み撃ち。水嶋皇帝も天守閣玉で籠城戦を展開。そのまま押し切る展開になったかと思いきや、予想外の一手で形勢が動く。

 

 

第4図

 

 図の←9一飛成!が強烈な一手。→同龍に↓8六歩と水嶋皇帝が歩を打ったところで様子が変わった。盤上の空気が水嶋皇帝狙いから中司帝王・天帝狙いにシフトしたのである。代えて←9二飛成も有力だと思うが、この場合↓8六歩は←同龍とされる可能性を考えると水嶋皇帝としては指しにくい。あるきびと四段が中司帝王・天帝との一騎打ちを避けた格好になった。

 

 だが水嶋皇帝がさらに一枚上の活躍を見せた。ここから攻めに攻めて中司帝王・天帝を盤の隅に追い込むと、貴重な飛車を手に入れながら撃破。この時点で残り3枚の飛車は中司帝王・天帝の駒台に取り残されていた。盤上唯一の飛車を手に入れた水嶋皇帝は、旧中司・岸亜陣を抑えることであるきびと玉を包囲。動いた潮流に乗って本シリーズ待望のトップを獲得した。

 

第4局の結果(ポイント制Bルール、十二番勝負)
1位:水嶋皇帝7pt(総合2位)+5pt
2位:あるきびと四段10pt(総合1位)+1pt
3位:中司帝王・天帝7pt(総合2位)+1pt
4位:岸亜双雷帝4pt(総合4位)+0pt

第5局 岸亜雷帝が鮮やかな攻めを決める。

 

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 第5局は3人が天守閣玉から右銀をぶつける積極策を展開。対して唯一地下鉄飛車に組んだ岸亜雷帝も攻勢を仕掛け一気に総力戦へと発展。どんどん駒がぶつかっていくなか、自陣を安定させた岸亜雷帝が一歩抜け出す形に。そのまま他者の追随を許すことなく堂々の1位となった。

 

 

第5図

 

 第5図の↑1五飛がお手本のような一手。あるきびと四段の強硬策←3七銀を無視して王手をかける。そしてすかさず↑1一飛成と成り込んで水嶋皇帝が打ち込んだ飛車をゲット。四人将棋において下家への王手は連続して手番を握る唯一の手段。麻雀で言えばポン・チー・カンで手牌を進めるようなもの。しかも麻雀と違って局面の主導権をそのものを握ることができる非常に強い一手である。

 

 さらに、この王手はただ攻めるだけではなく中司帝王・天帝に対してはアシストにもなっている。中司帝王・天帝を囲む2名を同時攻撃することで、中司帝王・天帝は水嶋皇帝への反撃に転じることが可能になった。もし中司帝王・天帝が挟撃で潰される展開になれば、水嶋・あるきびとの戦力が増強され岸亜雷帝はもっと苦戦を強いられていたに違いない。あるきびと四段の陣形をかき乱し、水嶋皇帝の攻撃力を削ぐ。ただの駒得以上に価値ある一手を決めた岸亜雷帝だからこそ、その後の展開で主導権を握ることができたと言えよう。

 

対局の結果(ポイント制Bルール、十二番勝負)
1位:岸亜雷帝9pt(総合2位)+5pt
2位:あるきびと四段12pt(総合1位)+2pt
3位:中司帝王・天帝7pt(総合3位)0pt
4位:水嶋皇帝7pt(総合3位)+0pt

第6局 水嶋皇帝が執念の粘り勝ち

 

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 第6局は4人が螺旋状に下家を攻める展開に。右辺を攻め合い、それにより空いた右側のスペースに陣を移す形は本シリーズでも頻出の戦型で、番い戦と対をなすものだと言えそうだ。特に激しい攻撃を受けたのが水嶋皇帝。逆刃刀模様に戦力を右側へと集中させるが、これをあるきびと四段にうまく避けられてしまう。その隙に中司帝王・天帝が一気に攻めかけたのである。

 じりじりと詰め寄られる水嶋皇帝だったが、捌いた金を投入して攻めの要である飛車を取ることに成功。しかしそこで退かないのが中司帝王・天帝の攻め。第二派と言わんばかりに縦列挟撃の飛車を投じるが、水嶋皇帝はこれも陣形の広さを活かして耐え凌ぐ。そして迎えたのが第6図の局面。

 

 

第6図

 

 中司帝王・天帝は一旦飛車を転じて←9九飛成。元々この地点にはあるきびと四段の飛車があり、飛車が直撃した状態で攻めを続けていた中司帝王・天帝としては仕方のない一手。当然の→9九同玉に水嶋皇帝の↓9二飛が冷静な一着だ。さっきまで敵の飛車が居た場所に自分の飛車を打ち付ける。これによって自陣に抜群の安定感が復活する。先に↓3三歩としては手順前後で、←9二飛と打たれると厄介だ。そもそもこの飛車打ちは下家への王手であり、そのあとで↓3三歩とすれば十分。手番の妙を活かした水嶋皇帝はここで形勢逆転。粘り強く戦って240手に及ぶ熱戦を制した。

 

対局の結果(ポイント制Bルール、十二番勝負)
1位:水嶋皇帝11pt(総合2位)+4pt
2位:あるきびと四段14pt(総合1位)+2pt
3位:岸亜雷帝10pt(総合3位)+1pt
4位:中司帝王・天帝7pt(総合4位)

 

 ここで十二番勝負の前半戦が終了。この時点でのトップはあるきびと四段で、1位2回・2位3回と絶好調。第4~6局の間では水嶋皇帝・岸亜雷帝がトップを取って点数を伸ばした。この6局で全員が1位・4位の両方を経験しており、しかもそれぞれ3回以上獲得は0人と星が偏ることもなかった。点数の上では差はあるが、実力そのものは拮抗している証拠だろう。


 そして十二番勝負は後半6局へと突入する。1局1局に四人将棋が濃縮されている本シリーズは何度振り返っても楽しいものだ。是非後半もお付き合い頂ければと思う。(続く)